前回の記事では、「広告」と「広報」は全く別物であること、「広報」とは狭義では「パブリシティ」、広義では「パブリック・リレーションズ(PR)」という意味があるということをお話しました。また、PRという言葉はアピール=訴求という言葉と混同されてしまっていて、正しい理解がされていないということもお話しました。
前回の記事はこちら。
今日はそんなPRについてさらに深り下げ、「ステークホルダーと八方善し」という考えかたについてお話したいと思います。今日お話する内容を理解することであなたは、今までやっていた発信が如何に限定的な活動だったかということがわかり、無料で簡単にできることがたくさんあることに気づくと思います。そしてすぐにでもPR革命を始めたくていてもたってもいられなくなると思います!
重要な用語の解説もいくつか出てきますので、ぜひチェックしてみてください。
それでは今日も早速いってみましょう!
近江商人の三方善し
あなたは「近江商人の三方善し」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?日本に昔からある言葉なので聞いたことがあるかたも多いのではないでしょうか?
中世から近代にかけて活動した近江国・滋賀県出身の商人。大坂商人・伊勢商人と並ぶ日本三大商人の一つである。
(Wikipediaより引用)
そんな昔の商人さんが残した哲学の一つが「三方善し」という考え方です。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という考え方のことで、
売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならない。
(wikipediaより引用)
という意味とされています。つまりその商売が発展することで関わる人全てが幸せになることを目指したわけです。ちなみに近年マーケティング用語としてCreating Shared Value(CSV)という言葉がよく使われるようになりましたが、日本語に訳すときは「共通価値の創造」と訳されます。なんだか三方善しの考え方ととても似ていると思いませんか?企業の競争戦略を専門とするアメリカの経済学者マイケル・ポーター氏が2000年代に提唱した言葉が、日本に昔から伝わる言葉と同じような内容を訴えていると思うと、とてもおもしろいですよね!
さて、そんなわけで数多くの経営者や商売人がこの三方善しという哲学を重視し、日本の企業文化は育まれてきました。ですが、市場の構造が複雑化した現代において、「売り手」と「買い手」と「世間」という三者だと、あまりにざっくりすぎて、実践的ではないよねということで、さらに具体的に細かく八つのステークホルダー(利害関係者)に分解して考えようという案が出てきました。
企業経営における利害関係者のことを指します。株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関や競合企業、地域社会や行政機関等も含みます。
八方善しという新スタンダード
鎌倉投信株式会社の取締役兼資産運用部長である新井和宏(あらい・かずひろ)氏が書籍「持続可能な資本主義」の中で提唱されている概念で「八方善し」という言葉があります。
持続可能な資本主義Amazon
具体的には、顧客、従業員、取引先、地域住民や自治体、国や行政、経営者、株主、社会(地球や環境)という8つのステークホルダーと共通価値を創造しようということを提唱されています。もちろん企業の規模や状況によってこの数は増減するでしょうが、いずれにせよ三方よりももっと細かいステークホルダーを想定して、それぞれと共有できる共通価値の創造に努めるべきだと仰っています。
PR革命の提唱するブランディングの定義
さぁ、それではここでPRの意味をもう一度復習しましょう。PRとは、広義においては「社会との良好な関係を構築する活動全般のこと」でした。ではこの場合の「社会」とはなんでしょうか?
PR革命では企業にとっての「社会」とは上記で挙げた8つのステークホルダーの集合体であると定義します。そして、この8つのステークホルダーにメディアを加えた全ステークホルダーとの共感の輪を広げる行為を「ブランディング」であると定義しています。
そしてPR革命では、PRが「広告」つまりプロモーションと混同されてしまうことが多いことから、上記のような八方善しの考え方をベースに社会との良好な関係を構築することを目的としたPRを「プロモーションPR」に対して「ブランディングPR」と呼ぶことにしています。図にまとめましたのでこちらをご覧ください。
図の中の「広告」にあたる部分は媒体を買って発信する広告もプロモーションPRも含みます。それに対してブランディングPRは全てのステークホルダーに対してコミュニケーションを取り、共感の輪を広げる行為となります。前回の記事でもお話しましたが、近年こういったプロモーションPRと混同されることを避けるためにコーポレート・コミュニケーションズ(CC)と呼ぶ企業が増えているのも頷けますね!
まとめ
さて、今回は「ステークホルダーと八方善し」というテーマでお送りしました。三方善しから八方善しにアップデートし、企業としてあらゆるステークホルダーとコミュニケーションを取ることで共感の輪を広げブランディングを実現しましょうという内容でした。次回は、そんなブランディングPRを実践し、今最も注目されている企業をご紹介したいと思います!
それではまた次回をお楽しみに!